師匠・高柳 昌行さんとの思い出 25

大島 信ちゃんは 僕に 目配せをして 首を横に 振りました。

『何が言いたいんだろう?』 と思って 近づくと、 ドラムを叩きながら 早口で こう言いました。

 

「弾かなくていいから・・・・・・弾いてる真似してて」

 

僕は事態を とっさに 飲み込みました。

ギターのアンプの電源が 自然に 切れたのではなく

大島 信ちゃんが ドラムを叩きながら アンプのスイッチを切っていたのでした・・・・・・・・・

 

僕は 言われたとおりに 正面を向いて ギターを弾いている真似を しました。

 

 

 

 

信ちゃんは 特別に 意地悪な人でも 悪い人でも なく、普通に 優しい人でした。

その信ちゃんが そういう行動に 出るという事は 

僕の演奏が そのくらい ひどかったのだと思います。

 

自分の力が そのバンドの中で どのくらいの物なのか という見極めも 全く できていない

ずぶの 素人でした。

 

ミッキー宮崎さんの バンドの皆さんに 非常に迷惑をかけてしまった と、 今は そう思います。

 

 

 

音楽というものは 不思議なもので 

特に 音楽の3要素の一つ、 リズムが 合わないと 演奏者たちは 生理的に 嫌悪感を覚えます。

その人間が 嫌いなわけではないのですが 

往々にして そのような 行動に 出てしまうものなのです。

 

(その逆に リズムが 合うと、連帯感と いいようのない陶酔感に満たされる訳ですが・・・・・・)

 

 

正面を向いて ギターの弾き真似をしていた時間が どのくらいだったのかは 忘れましたが

短かったような気もするし 長かったような気もします。

人前で ギターを 弾いている フリ をするという事が あれほど

恥ずかしい物だという・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

いい経験を しました。

 

そのステージが終わって 大島 信ちゃんが 「宮崎くん 弾かなくていいから」 と言い

僕は 「はい わかりました」 と答えました。

 

きっと 信ちゃんは  他のメンバーに対して、 

自分が 連れてきたギターだからという 引け目が あってのことだったのでしょう。

 

ミッキー宮崎さんが 「いいよ いいよ、少し ボリュームを下げて 弾いててください」

と 助け舟を 出してくれました。

 

 

こうして その日は 過ぎていきました。

 

 

しかし それから 数日後

また 信ちゃんが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・