ええ~、毎度おなじみチリ紙交換です…

さて、×月×日…。
このころになると、街角のゴミ置き場に捨ててある新聞紙の厚みをみて、お金に変えるといくらになるか、瞬時に判断できるようになっていました。 
路地裏を、車で走りながら、"あっ、50円落ちてる、あっ、あそこにも80円"、とか言って実際に車を止めて、拾い集めていました。 
そして、嗅覚というか、不思議な感覚が少しづつ身についてきます。 
子供のころ、山に山菜をよく取りに行きましたが、繁みを分け入って視界が少し広がる地点に出た瞬間、"このへんは、最近誰も来ていないぞ" とか、"最近誰か採って行ったな" とか 感じていました。 それと似たような感覚です。
路地裏をゆっくり車を走らせています。そして、少し視界が広がる地点に出た瞬間、この辺は まだチリ紙交換屋が入っていないな…とか、最近誰かが来たな…とか解かる、そういう感覚です……。

×月×日 この日は朝から良いお天気で何かが起こりそうな日でした……。

新聞が集まるパターンって言うのは、ゆっくり車を走らせていると、部屋の窓から顔を出したり 玄関から出てきたりして 「チリ紙やさー-ん」とか呼ばれて その場所に行って 2, 30キロ~5, 60キロの新聞をちり紙や、トイレットペーパーと交換して行きます。
そしてまたゆっくり走らせて、2, 30分後にまた 「ちりかみやさ~~ん」とか呼ばれて、また同じくらいの量の新聞をチリ紙と交換します。 
皆さん新聞をチリ紙交換に出すぺースって言うのは大体決まっているようで、30キロから 5, 60キロ位の人が多かったように記憶しています。 
 
さて、×月×日、 
この日は朝から天気も良く何かが起こりそうな予感がしていました。 
9時に会社を出て、何気なく入った△△町の路地……。
その路地をしばらくゆっくり走っていくと、少し広めの住宅街に出ました。
そこで今日の第一声の 「ええ~~毎度おなじみチリ紙交換でございます、古新聞、古雑誌、ございましたらお知らせ下さい。チリ紙トイレットペーパーと交換いたします~~」 と大きな元気な声で言いました。 
10メートルくらい先の一軒家の玄関がすっと開きました。 
白い割烹着を着た上品そうなご婦人が 「ちょいと、チリ紙交換屋さん、うちにもお願いします…」 
僕はマイクを通して、「はい、すぐ行きま~~す!」 と言い 
車を道端に止め、小走りにその後婦人に近寄り 「有り難うございます、新聞はどちらでしょうか?」 
するとその件のご婦人は、「ええ、こちらにいらしてくださいます?」 と言って 
建物の脇の少し大き目の物置に近寄り入り口を開けました。 
 
ええっ!!!!」 ……!

                                   (続く)

 

 

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