北海道阿寒郡阿寒町大字仁仁志別

漬物作りは日中 日が照っている時にムロの中で行われます。
入り口の蓋を取り外し太陽の光を中に差し込ませます。
深さ1メートルの所に2, 3段の梯子を設置します。
先ず、空の一斗樽、漬物石(かなり重い)、漬物の材料、これらを ムロの中に運び入れます。

おばあちゃんは、ムロの中にござと座布団を敷いて座り 大きなまな板で大根やカブなどを切り、それらを 一斗樽に敷き詰めては塩を振り、その上にまた敷き詰めて塩を振り 時には麹を入れたりしていたように思います。

レシピなどは無く自分の長年の経験と勘だけで、塩や身欠きにしん、麹、酒かす等の量を決めていました。

樽いっぱいになると、蓋をしてその上に漬物石を載せます。
それが僕の役目でした。

最初の時は重くて大変だなあ、いやだなあ…、
と思っていましたが、2年目からは、またあの美味しい漬物が食べられると思うと勇気が湧いてきて 重い漬物石もさほど苦には感じなくなりました。


ここで僕の大好きだった鰊漬けについて……。
大根(干したもの)を回し切りにします。
キャベツを7センチ角くらいに ざっくり乱切りにします。
身欠きにしんを5センチ幅くらいに切ります。
それらを 大根4、キャベツ3、鰊3、くらいの割合で混ぜて 詰めていきます。
詰めながら塩と麹をお婆ちゃんの勘で振っていきます。 
そして樽に蓋をし、漬物石を載せます。 
あとは自然の不思議な熟成の力によって 2, 3週間目くらいから食べられるようになります。 



これは僕の勘ですが、 鰊の量が少ないと、大根やキャベツへの味のしみこみ方が 不十分で濃厚な鰊漬けの味が出ないように思います。
何故なら、
東京に来て、何回かそのような味の鰊漬けを食べたことが有るからです。
例えば、道産子料理専門店のような所で…。


おばあちゃんの鰊漬けは本当に美味しかった……。

人間の長年の経験と勘、 これは本当に素晴らしい物だと思います。



厳しいおばあちゃんでしたが、あの深い味わいの漬物を食べさせてくれたことに対して未来永劫にわたって感謝します。

                                   (続く)

 

 

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