北海道阿寒郡阿寒町大字仁仁志別

47年前の川釣りの思い出としては もう一つこれも書かないわけにはいかないでしょう。 
それは、幻の魚と言われているイトウのことです。 
僕は1回、釣ったことがあります。
体長は約80センチ、体表の模様はイワナによく似ています。 


先日書いたように、その昔、仁仁志別の開拓部落には秋になると、川に棒を立ててもしばらくは倒れなかったと言うくらい 毎年鮭が大量に上ってきたといいます。 
僕も何度か数尾の鮭を見たことがありまして、その鮭に、数十匹のヤマベが群がってあとを追っている光景は壮絶でした。 

このように、当時の仁仁志別は 都会の喧騒とはかけ離れた 大自然の真っ只中の開拓部落でした。
都会では 幻の魚と言われていたイトウの1匹や2匹 いたところで何の不思議もありません。

いつもは15センチから20センチくらいのヤマベを釣っている竿には、さすがに80センチのイトウを釣り上げるには 無理があったようでした。
やっとの思いで手元に引き寄せて安心した途端に するっと手から滑り落ちるように川へ転げ落ちていきました。
   
逃がした魚は大きい…。
   
よく言われる言葉通りです。 
見たことのない魚だったので 家に帰って図鑑で調べてみるとイトウだったのです…。


大人になって都会に出るようになって、たまに渓流釣りの話を ニュースで見たり、人から聞いたりすることがありますが、 そんな時何時も、子供の頃大自然の中にいて ヤマベやイトウを釣っていた情景が思い出されます。 
自分にとっては全く当たり前の経験だったのですが、 実は、物凄く貴重で稀有な経験だったんだなあ…
という思いに駆られます。 


人によっては珍しい物が他の人には珍しくなかったり 人間社会と言うのは多種多様な経験をした人々の 集合体なんだなあ…。
自分と違う人の つまり他人の経験とか考えに いくばくかの敬意を払って 接しなければいけないと言うことが 川釣りを通して学んだことです……。

                                     (続く)

 

 

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