北海道阿寒郡阿寒町大字仁仁志別

曲がりくねり ゆっくりとした水の流れの穏やかな川。 
それが信義少年の住んでいた仁仁志別の川でした。

ある日、小さな橋の上から川を眺めていると 魚が数尾、泳いでいるのが見えました。 
あ、そうだ!魚釣りでもしてみよう! 
と思い立ち、家の前にある 仁仁志別に1軒しかない商店に行き、釣竿と(釣竿といっても、2メートル位の細い竹を切っただけのものですが…)テグスと針を買い求めました。

こう書いていて今気が付いたのですが、釣竿と糸と針が売られていたということは、部落の中に釣りをする人がいたと言うことになるのですが、 2年間で、1度も釣り人に会ったことがないのです。
不思議です、どこで釣りをしていたのでしょうか? 

まあ、それはさておき 夕張にいたときに、家の前の川でカジカを釣ったときのことを思い出して みみずを餌にしようと思い そこらじゅうに積み上げられている馬糞の中から みみずを適当に缶に集めました。
さあ! 出発です!

川釣りは 川上から川下へ流れに任せて糸を流します。
いきなりガクンと衝撃が走りました!!! 
ピッと竿を持ち上げてみると なんと 'やまべ' が釣れているではありませんか!!! 

非常に簡単に釣れます。 
15センチくらいの体長で 体表には丸くて黒い模様が3つ4つあります。家に帰って図鑑で調べたら、'やまべ(め)' だと知りました。
その他に、いわな(うぐい)、いとう、等がこの辺には 生息していると言うことを学びました。

さて話を戻して…。
あのガクンという衝撃がたまらなく快感を伴って 少年の心を捉えました。
ああ、魚釣りって面白いんだなあ! 
淋しさなんかすっかり忘れて  もう夢中でした。 

10メートルも川を上ると、 7,8匹くらいはすぐに釣れます。
釣ったやまべは近くにある細い木を 20センチくらいの長さで折って 葉っぱを全部取って、魚のえらから口へ通します。
簡易 'びく' です。

その日は2,30メートルも川を上ったところで 終わりにしました。 
もうミミズがなくなったのでした。 
30メートルといっても 川は曲がりくねっていて 周りは雑木林で大自然の真っ只中って言う感じで 物音一つしません。
聞こえる音は鳴き方の違う数種類の鳥の声だけ…。

信義少年とやまべのみが存在している……。

                                     (続く)

 

 

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