師匠・高柳 昌行さんとの思い出

 

 

五反田の駅に降り立って 先生にもらったメモ用紙に 記された通りに 地下鉄に 乗りました。

五反田に行くのも 初めてだったし まして 地下鉄に乗った経験も 

あまりなかったので なにやら すごい 大冒険をしているような 気分でした。

 

行き先の 最終地点は 玖島ギター研究所・・・・

 

あ、あった! きっと この家だな。

 

静寂の中に 落ち着きを見せた 一軒家があり、

大きめの 縦長の表札に

‘玖島ギター研究所’と確かに書いてあります。

 

『研究所 なんて 随分 大げさな名前だなぁ・・・

ギターなんて 楽しく弾ければ いいんじゃないの?』 と 

軽く 批判めいた気持ちが湧いたのを 覚えています。

 

しかし そうはいっても 教則本を買って帰らないと レッスンが先に進まないってことも

その青年は 解かっていました。

 

青年は 思っていました。

地下鉄に乗って来るあいだ・・・・・

『普通、教則本ってのは ヤマハかなんかに行って 買ってくるものじゃないの?

なんで、わざわざ 本人の家まで 行かなきゃいけないんだぁ?・・・・・』 と。

 

ずぅっと後になって 解かったのですが、

玖島隆明さんの教則本は 初心者が スケールやクロマチックを学ぶのに 

非常にすぐれた本でした。

しかしあまり 売れなかったみたいで ヤマハとか 

そういう大きな販売店では 取り扱われて いないようでした。

 

往々にして 本物って言う物は そういう物なのです・・・・・

 

 

表札の前に立って 玄関の開き戸を横にすべらせて 一歩 足を踏み入れて

「コンニチハー!」

と大きな声で 挨拶をしました・・・・・・・・・

 

 

続く・・・・・・

 

 

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