楽器との出会い

福ちゃん…JAZZ drumer、50代前半、男、NY在住、面倒見がよくNYに住む日本人ジャズメンの精神的支柱?かな…。
翌日、福ちゃんについて来てもらって値切りの交渉。見事の一言 !! 4500ドルで当時の消費税は8%だったから合わせて4860ドル。それを、福ちゃんは流暢な英語でたった4, 5分で4000ドル丁度で話を纏めました。
その間、横で聞いているとスタッフと福ちゃんの間で フォーみりおんだらー?とか、ファイブはんどれっとなんとかかんとか…訳の分からない言葉がやり取りされていましたねぇ。その間、僕は福ちゃんのことを頼もしそうに見ていた記憶が残っています。結果的には素晴らしいものでした。
そしてこれからが大事なことなのですが、その時僕は100ドル札の重みが全然理解できていなくて…まるで子供銀行のお札のように感じていました。
さらにトラベラーズチェックで100ドルが40枚で一冊になっていて(これ1冊でこのギターが買えるならスゴイ!)と簡単に考えました。 
これは数年後、日本に帰ってきて思ったことなのですが、たかがギターに100万円は絶対に出すことは有り得ない。 もし日本の楽器店で100万円っていう値段が付いていたら、いくらあのギターでも絶対に買っていない、あの時NYで買えたのは錯覚だったんだな……ということです。 
だから楽器との出会いに不思議な因縁を感じているのです。
全ての出来事は 「時」 と 「運」 に支配されているのではないでしょうか…。
ちなみに当時1ドルは250円でした。

さて値段の交渉が終わって店員が言いました。 
「トコロデダレガカウンダ?」という風なことを…。 
すると福ちゃんは僕を指差して「He」 。
店員はNYの風景にすっかり溶け込んでいる風な薄汚い僕を驚いたような顔をして見ました。 
僕は言いました 「I want to buy this guitar」 。
店員は「リリー?!」 僕は「イエス!」と大きく頷きました。 
店員は「ショウ ミー マネイ!」と叫びました。
僕は静かに内ポケットから4000ドル分のトラベラーズチェックを出して見せると、店にいた4, 5人のスタッフが全員集まってきて「オー ワンダフル!」と言って大騒ぎになったことを今でも鮮明に思い出すことが出来ます。 
僕は何でこの人たちはこんなに大騒ぎするのかなぁと不思議な気持ちでした。 
こんな子供銀行みたいなお札なのになぁ…。 
習慣や環境が違うととんでもないことが起きる典型的な見本みたいな出来事でした。 
僕は帰りの飛行機で1割の税金を払わなければいけないのを思い出して、領収書の金額を10万円くらいで書いて欲しいと言うと、その店員は……                        (続く)

 

 

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