北海道阿寒郡阿寒町大字仁仁志別
「信義、今日からお前はうちの子になるんだよ」……
もう既に夕張からずうっと離れて遠いところに来ているし、子供ながらにも、事の重大さに圧倒されて、なすすべがなかったと言うところでしょうか…。
『山花』 と言う駅から やや離れた場所に 仁仁志別(ににしべつ)行きの"馬車"の停留所がありました。
馬車!ですよ。
それを地元の人たちは(後になって知ったのですが) 『 トロッコ 』 と呼んでいました。
1メートルくらい幅の線路が敷いてあって、そこを 馬が1頭で、7, 8人くらいが座って乗れる、3畳くらいのスペースの 木の箱を引っ張って行きます。
仁仁志別までの公共の交通機関は、なんと、このトロッコでした。
僕が連れて行かれようとしている 仁仁志別という所は 新聞は3日遅れ、水道も無い、開拓部落でした。
『山花』から、3里の道を、とぼとぼと馬車に揺られて行きました。
さしたる会話も無く、他に乗客も無く、ごとごとというトロッコの音だけ……。
静寂の中を仁仁志別へ向かって行きます。
これからどうなるんだろう……
(続く)