北海道阿寒郡阿寒町大字仁仁志別

涙が溢れて枕を濡らして寝ても、 一晩寝ると、何事も無かったように 新しい1日が始まります……。
  
  
寝巻きから普段着に着替えて、茶の間のストーブの傍に座りました。
するとおばあちゃんは、以後、何百回と聴く事になるのですが 何故僕を、柘植家の跡取りに選んだのかを説明し始めました。

そのストーリーはこういう物でした。 

おばあちゃんには5人の子供がいました。
   
 長女 …… 阿部れい子 
 長男 ……    貞則
 次女 ……    たか子 
 三女 ……    勝子(僕の母) 
 次男 ……    貞之 
  
勝子が12, 3歳の頃、家のそばで遊んでいると 師範学校の学生が、ひどい怪我をして足を引きずって 苦しそうに近づいて来ました。
見かねた勝子が、家に連れて行き 母に手当てを頼みました。
その学生が 柘植広だったのです。 
それが縁で、阿部家と柘植家の交流が始まり、裕福ではなかった柘植広の面倒を おばあちゃんが見たといいいます。 

柘植広は次女のたか子と結婚の約束をしていたのですが、たか子の病死で、婚約も自然消滅……。 
それがショックで、柘植広は生涯独身を通しました。

次男の貞之が、函館工業高校の学生だった頃、夕張に実家のある宮崎勝義(僕の実父)が、 函館のおばの所に下宿をし 函館工業高校に通っていました。
宮崎勝義と、阿部貞之が いつしか心の友になり 勝義が、阿部家に頻繁に出入りするようになります。

勝義が勝子を見初め、その後結婚。
三男二女をもうけます。 



月日が流れ……、
柘植広は、師範学校を卒業して、釧路管内で 教員生活を続けておりました。
昇進を重ね、教頭から、校長になろうと言う時 一つの問題が起き上がりました。
それは、校長になるには、家庭を守る人がいることが必要条件だったのです。 
それで若い時世話になった阿部トミを 養うという目的も兼ねて同居したのでした………。

                                     (続く)

 

 

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